愛ゆえに。【完】

「乃亜ちゃんって……もし、俺がいなくなったらどうする?」

ふとしたタイミングで、そんなことを優羽が言った。
笑いながら、冗談みたいに。

でも私は、笑えなかった。

「そんなこと、言わないでください」

喉の奥がぎゅっと詰まった。
彼を失うことは、もう二度と耐えられない。

兄を失った夜、私は泣かなかった。
泣く権利なんて、私にはなかった。
でも、優羽がいなくなることを想像しただけで、涙が止まらなかった。

「……優羽くんがいなきゃ、生きていけません」

心の奥で、そう叫んでいた。
けれど、声には出せなかった。

私にはもう、罪がある。
どれだけ彼を想っていても、それは“罪”という名前の檻の中の愛だった。