夜明け前、廃工場跡の集会所に集まった「夜葬」のメンバーたち。
蓮は静かにバイクにまたがり、ヘッドライトの光で鈴を照らした。
淡い朝靄の中、鈴は白いパーカーに身を包み、小さな笑顔を浮かべる。

「準備はできてる?」

蓮が頷くと、一行はゆっくりと走り出した。

郊外の海岸線を抜け、二人は崖の上に立つ灯台へ向かう。
潮風が鈴の頬を撫で、いつもの痛みを忘れさせる。

「蓮は、将来どこに行きたい?」

鈴の問いに、蓮は遠く水平線を見つめながら答える。

「お前となら、どこでもいい。でも…まだ見ぬ景色を二人で探したい」

灯台下の小さな広場でバイクを停め、鈴はベンチに腰かけた。
胸が重くなる瞬間に備え、蓮はそっと鈴の背中に腕を回す。

「無理はするなよ」

「うん…でも、今日はずっと笑っていたい」

鈴の瞳に、朝日に煌めく涙がひとすじ光る。

蓮はポケットから、小さな銀のペンダントを取り出した。

「これ…守り神だってさ。俺が見つけたんだ」

鈴は驚きながらも、そのチェーンを指で撫でる。

「ありがとう、大切にする」

二人の距離は、言葉以上に近づいていた。

帰路、鈴の体調が急に揺らぎ、バイクの後ろで顔を歪める。
蓮は即座に停車し、メンバーの一人を呼んで鈴を支えた。
冷えた手で鈴の額に触れ、蓮は小声で誓う。

「どんな夜も、俺が灯になる。お前を絶対に失わない」

朝陽が水平線から顔を出すころ、鈴は静かに微笑んだ。
胸の痛みも、少しだけ遠のいた気がした。
――未来への灯火は、二人の心に確かに灯った。