夜のガード下。黒いレザーに身を包んだ「夜葬」のメンバーが、ずらりと並ぶ。街灯の橙色が、彼らの鋭い視線を浮かび上がらせた。

「総長、今日も遅いっすね」

二代目副総長・轟(とどろき)が皮肉混じりに笑う。蓮は無言でバイクのエンジンを切り、ゆっくりとヘルメットを脱いだ。

その傍らには、いつもの白鷺鈴──だが今日は制服ではなく、淡いブルーのワンピース姿。メンバーの視線が一斉に彼女へ注がれる。

「……誰だ?」

幹部の一人が問いかける。鈴は震える声で一歩前へ出た。

「白鷺鈴。花城の……大切な人です」

蓮は一瞬、鋭い視線をメンバーに投げ、「余計な口出しは許さない」と低く言い放つ。その声には、総長としての揺るぎない覚悟と、鈴を守る強い意志が滲んでいた。

轟が含み笑いを漏らす。

「総長がお気に入りなら……俺たちも歓迎してやるか?」

空気が一瞬張り詰める。鈴は胸の痛みをこらえ、蓮の横顔を見上げた。

「ありがとう、みんな……」

その声に、蓮の硬い表情が和らぐ。

蓮はバイクの横へ戻り、鈴の手を優しく握った。

「ここが俺の居場所だ。お前も……無理せず、俺のそばにいてくれ」

鈴は静かに頷き、深く息を吐く。

夜葬のメンバーたちは、不思議そうに頷き返し、闇の中へと解散していく。
二人だけに残されたガード下は、エンジン音も人影も消え、静寂が支配した。

「――誓いは、交わされたな」

蓮の声に、鈴はかすかに微笑む。
夜風が二人の影を揺らし、遠ざかる街灯の光が、二人の未来をそっと照らしていた。