夜の街を切り裂くように響くエンジン音。
スモークが漂うガード下、黒塗りのバイクに跨る男の姿があった。
彼の名前は——花城 蓮（はなしろ れん）。
「夜葬（やそう）」と呼ばれる暴走族の総長にして、街の誰もが一目置く存在。冷静沈着、無駄を嫌い、仲間を絶対に裏切らない。その生き様は、まさに“夜の王”そのものだった。

一方、静まり返った放課後の保健室。
窓際のベッドで読書をしていたのは、白く儚い少女——白鷺 鈴（しらさぎ すず）。
彼女は持病を抱えながらも、毎日を淡々と過ごす高校二年生。誰にも近づかず、誰も寄せつけない。その瞳は、世界の全てを拒絶しているかのように冷たかった。

出会いは偶然。
——いや、必然だったのかもしれない。

「邪魔。どいてくれる？」

ある日の夕暮れ、保健室前で交錯したふたりの視線。
それが、二つの運命を繋げる始まりだった。

——夜に咲く花は、いつか月に恋をする。