ピンポーン』『ピンポーン』『ピン、ピ、ピ』

「うるさい、なんだ?」

連続で鳴らしすぎて、もはや呼び鈴の音かさえもわからなくなっている。

氷華が、眠りかけてぼーっとしている頭を、無理やり起こす。

ぐるりと周りを見渡し、いつの間にか寝てしまっていたことに気づいた。

ーーそのまま寝てしまったのか。ーー

あの頭の痛みに耐えながら重労働をしたのだ。疲れていて眠ってしまったのも納得出来た。

ダイニングテーブルを挟んで向こう側の壁にかけてある壁がけ時計に目を向けると、時計の短い針は2を、長い針は6、7程度を指している。

要するに今は2時6、7分くらいだろう。

そして、窓の方をむく。日光遮断カーテンの隙間からは、光は見えない。ということは、今は午前の2時ということか。

氷華は絶対に呼び鈴に応じないと固く決意する。
こんな時間に来る客なんて、面倒くさい常識知らずな客に決まっている。

このまま聞き過ごそうとは思ったが、なかなか呼び鈴の音が止まない。

「しつこいヤツ、、。」

客が諦めて帰るか、うちの呼び鈴が壊れるか、5対5と言ったところだろうか?

ーーいや、7対3だな。ーー

うちはマンションなので、壊れたものは直してくれるのかと思ったが、どうやら自分で直さなくてはならないらしい。
インターホンとて、お値段は高いに違いない。
そんな考えが氷華の頭によぎり、憂鬱になる。

本当にヤバいやつだった場合、警察に連絡しようと、ダイニングテーブルの目立つ位置に携帯電話があるのを確認する。

氷華が、腰を上げ、通路を挟んだ壁にあるインターホンの『通話』と書かれたインターホンの半分くらいの面積のボタンを押す。

『あ、でたでた。すみません、こんな時間に。実は道に迷ってしまいまして。こんな時間ですから、なかなか人も通らず、警察署の場所もわからないもので。』
一瞬、息が詰まる。玄関の向こう側には、

青年がいた。