……車内は、いつになく静かだった。
次から次へと流れる車のランプの光や、対向車線から通り過ぎていくエンジン音だけが車内に響いてた。
ーーー……
カチッ……
カチカチ………
あたしは無音の中で、お客さんに「ごめんね」のメールを飛ばしまくっていた。
それも終えて、もう今日一日の疲労が勝ってしまい目を閉じる。
「……疲れたなぁ………」
今日も口ずさむあたしの口癖を、あなたはどんな表情で聞いていたのかな?
「………」
さすがにこの状況では太郎も声を掛けづらかったんだろう。
でもその方が良かった。
大丈夫、だとか可哀想だなんて軽い慰めの言葉なんか、余計にトゲトゲしく感じて何にも心に響かないだろうから。
思いもしてないなら、何にも言わない方がよっぽどマシ。
無理に掛ける優しさなんて、私には痛みを与えられるのと変わりなかった。
──────……
……─────
無言の車内で目を閉じ、しばらくするとフワフワと意識が遠退いていく。
あー………。
何か海に浮いてるみたいで気持ちいいな……
“もうどうでもいい”感がすごかったあたしは、そのまま睡魔の波に身を任せていたんだけど。
「─────っ………う、」
しばらくして、あたしは夢の中で溺れていた。
いや……正確にはうなされていた。
“あのね、アンタの好きな人ってね
ずっと報われない恋して疲れたんだって♪
その想い続けてる人とマキが、何か似てるって言われて……
すんごい気が合っちゃって♪”
─────好きだった人を………
友達のマキに奪われる夢。
もう何度この夢を見たんだろう。
何回目?
「………はぁっ……はっ……」
息が出来ない程、苦しい。
まるで溺れているみたい。
この夢を見る度、あたしは海の底に溺れた錯覚を覚える。
まるで冷たい一寸の闇の先に、一気に沈められたような感覚に落ちていく。
手を伸ばしてもがけばもがく程、余計に底へ沈んで行く。
─────足が重い。身体が動かない。
「……助けて……」
その声も泡となり消えて行き、言葉にすらならない。
そもそもあたしを助けに来てくれる人などいない。
……そうだ。そうだよ。
元からそんな人誰もいないんだった。
絶望に身を委ねる。
ならいっそ、とあたしはもがく事を止め、諦めて目を閉じる。
自分から、青い闇に沈んで行く。
その先に待つ、穏やかな世界を夢見ながら。
……もう、いいんだ。
そう覚悟した時
「……─────みさんっ、愛美さんっ!!」
誰かが、あたしを青の世界から引き上げた。



