──────カツン……。 夜の闇に響くヒールの音。 あたしは夜の闇へと一歩踏み出し、今日も高いヒールを鳴らす。 月明かりが、行き先を照らすくらいがちょうどいい。 太陽は眩しすぎて、もう好きじゃない。 長い髪を揺らすと同時に、ピアスが月に反射されキラキラと光る。 あたしはハァッと溜め息一つ吐き、今日も嘘と欲望にまみれた世界に溶け込んで行った。 あたしは今日もその世界へと、消えて行く。