………そんな、絶望の最中にいた時。


居場所すら分からず、一体何の為に生きているのかと自問自答を繰り返す日々の中だった。





“彼”に出逢ったのは………。








──────ある日の夜………。







「あ~……今月もナンバーワンの座は遠かったなぁ〜…」




あたしは控室で帰りの身支度をしながら、貼り出された成績表のグラフを見てガックリと肩をうなだれる。



「残念だったわねー♪この不動のナンバーワンキャバ嬢、美月様に負けと言う言葉はなーいっっ♪♪♪」



「・・・」




すぐ横でこの店のナンバーワンキャバ嬢、美月が満面の笑みで微笑んで、グサッと一撃を食らった。



ちなみにこの子はあたしの中学の時の仲が良い友達で、いじめを受け何もかも失くして失意の中にいるあたしを、この世界に引っ張ってくれた……恩人。




「はー、あたしは今日もナンバー2と言う肩書きから抜け出せないのね……」



「まなちゃんはまだいーじゃんッッ!!
萌なんかまなちゃんより下のナンバー3語らなきゃいけないんだよぉ!?!?」



隣で同じくグラフ表に文句を付けるのは、この店ナンバー3のキャバ嬢、萌。


天真爛漫で、話し方がちょっぴり独特な、人懐っこい女の子。





「ごめん萌……あたしがいるからナンバー3だもんね…」



「ぐっ、ちょっとまなちゃんそれ完全イヤミだよっ!!」




「あはは、ナンバー2もナンバー3も一緒一緒♪
このナンバーワンキャバ嬢美月様をコテンパンに負かすくらいの勢いで来ないとっっ♪♪♪」




「……まなちゃん、あれが一番イヤミだよね…」


「ね、そうだよね」



「は!?あんた達何て言った!?!?」



「……いや何にも」


「うん何にも言ってないよー♡ねっまなちゃーんっ♡」




キャハハと笑い合い、あたし達は控室を出た。




普通トップキャバ嬢レベルになると女同士熾烈な戦いが繰り広げられるんだろうけど……あたし達は違った。



美月とあたしが中学時代の友達と言う事もあるし萌も性格柄、あんまりそういうのに興味ないみたいで。




あたし達はその辺、仕事のON-OFFを切り替え仲良くしていた。




今日は久しぶりにアフターもなく、送迎の車に乗り込む。





「お疲れ様でした」



「おつかれぇー」




ドライバーに挨拶を交わし、座ったところで何となくいつもの違和感に気付く。




……ん?

今の声いつもと違う……



もしかしてドライバーさん代わった?





あたしは運転席に座る“彼”を見つめた。