ギター部の恋愛事情

 いざ、これから上田の気持ちを探ろうと次の日から動き出したが、どうやってどちらが好きなのかを確かめられるのか分からないので、とりあえず、暇な時間ができれば、上田を尾行、観察を重ねた。バレれば無視をしてその場を一時的に去り、しばらくしたら戻ってまた観察を再開するを繰り返した。

 これを始めて三日後、「ずっと井口とおるな、」と拓人が言い、一真が「そうやな、俺らが無視してるからそうするしかないんやろうな、」と言った。本当にその通りで、上田はずっと井口と過ごしていたため、三浦か大沢さんのどちらかと会うのを目撃できずに、数日が過ぎていった。そんな時三浦と上田が話しているのを見るチャンスが来た。

 「あ、三浦だ。」と壮吾が言い、「ほんとやな、」と一真が言った。

 「三浦やん!元気か?最近さ、みんな俺のことストーカーしてるのに無視してくるんやけどなんか知らん?」と上田は聞いた。「え、知らないな、上田くんとうとう僕以外の人にも嫌われ始めたの?」と三浦が言うと、「え、マジ?みんな俺のこと嫌いなん?てかさ、お前俺のこと嫌いなん?」と上田が言ったので、竹村は「え、今のは、忘れて、それに、上田くんが嫌われてるっていうのは、あくまで、想像だから本当かどうかは分からないよ、」

 拓人が「上田、相変わらず三浦に嫌われてるな、」と言い、一真が「上田はしつこいからな、」と言った。

 三浦と話していて上田はふと、そういえば、俺三浦のことが好きやと疑われてるんやったと思い出し、聞いてみた。「なあ、三浦もし俺が女以外に恋したらどう思う?」三浦は驚いて答えた。「え?まぁいいんじゃないの?誰を好きになっても自由なんだし、」上田は少し考えて、「そうやな、」と言った。そこで、三浦は、上田がゲイに目覚めたと思い「何?ほんとに男で好きな人ができたの?」と聞いた。すると上田は、また少し考えて「うーん、そうやなくて、疑われてて、」と言い、三浦が「へぇー、誰と?」と本当はそこまで上田が誰を好きと勘違いされているのか知りたいわけでもないが、会話の途中で切り上げるのも変なので、仕方ないというように聞くと、上田からは想像してなかった答えが返って来た。

 三浦が誰とって聞いてきた、ここで本当のこと言うのはどうなのかと一瞬思ったが、本当にそう思ってるわけでもないので、嘘をつく必要はないと考え、本当のことを言った。「お前、」すると三浦は、すごく嫌そうな顔をして即答した。「絶対嫌だ。」そして上田も続けて「俺やって嫌やわ」と言った。

 その様子を見ていた三人は、「え、上田本人に言った?」と拓人が言って、「マジか、隠さないんやな、」と一真が言った。そして壮吾が「嫌ってことは、三浦ではないってことだね」と言うと、「いや、本人の前やから隠しただけかもしれんで、」と拓人が言って、もう少し様子を見ることにした。

 そんな時、向こうから大沢さんがやって来た。そのことに三人も気づいたので、この日はもう少し観察を続けることにした。「よー!女」と上田が声をかけ、「どうしたんですか?」と大沢さんが聞いた。上田は、みんなに嫌われてることがよほど落ち込んだようで、いつもなら、絶対自分が上だという感じで大沢さんと話すのに、「俺、なんか嫌われてるみたいやわ、」と弱音を吐いた。すると大沢さんもいつもと違う上田の様子に気付いたようで、「誰からですか?」と聞いた。上田が「彼女持ち」と答えたので、大沢さんはいつも通り、彼らをいじって嫌われたのだと判断し、いつも通り先輩をいじることにした。「そうなんですか!ざまあみろですね!」というと、上田もいつも通りになりいじり返した。「お前、喜んでるやろ?」というと大沢さんは「はい!上田先輩がぼっちなの面白いので、」と言い、「お前覚えとけよー!」と言った。上田は、まだ気づいていなかったが、この会話をどこか楽しんでいる自分がいた。

 そして、観察していた三人にはそれが伝わり、お似合いで、会話などで波長が合っていて、上田は大沢さんが好きだというので間違いなさそうだと思い、大沢さんが好きということで話を進めることにした。