ギター部の恋愛事情

 無事、恋人になれたものの、私たちには大きな違いがあった。それは、物心ついた時から恋を求め、多くの片想いの恋愛を繰り返して来て、恋愛中心で生きてきた私と、私以外に恋をしたことがない恋とは無縁の生活をしていた一真。

 片想いは数えきれない数を経験して、両想いに強い憧れを抱いていた私は、両想いのことはほぼ分からなくて基準がマンガ、小説、ドラマなどの物語になっていた。物語で起こることを現実に当てはめるべきでないことを知らなかった。

 その物語の恋愛や理想を一真に押し付けていた。こうして欲しいって思っていただけだからそのことは一真は知らないだろう。そこで私は、理想が叶わないのは現実とフィクションは違うということが分からず、一真は初恋だからしょうがないという結論を出してしまった。

 私は、一真の心の準備ができるまで待てば、良いのだと思った。他の人や、普通と比べて、何も進展しないことに不安を覚えた。でも、いつまで待ったとしても多分変わらない、物語の恋愛シチュエーションは現実には通用しない。他の人と比べても意味はないのだ。

 私たちは、私たちのペースで、きっとそのタイミングがきたら、出来るのだろうって思うようにした。

 これは、付き合うことになって、8か月経ってから分かったことだ。

 私は、間違っていた。元々物事の捉え方が二択だった。好きか嫌いか、敵か味方か、良いか悪いか、そうやって物事を判断していた。それと、両想いという未知の世界への誤解が相まって、一真のことを過度に信じ過ぎたり、一真の周りの人間のことを敵視していた。そうやって自分を守っているつもりだった。

 でもそれは、一真を困らせたり、嫌な思いにさせること等のマイナス面しか起こらない。実際、疑っていたもの全て表に見えるようになった時、私の誤解だったことしかなかった。

 この人怪しい、もしかしたら一真のこと好きなのかも、一瞬そう思っただけで私は要注意人物として見ていたけど、実際その誰もが一真のことなど好きではなかった。全て私の勘違いだった。

 恋愛小説には絶対ライバルがいる。片想いを繰り返していた時から私は、小説に出てくるようなライバルみたいな感情を持っていて、主人公にも共感したがそれよりもライバルの存在が私の価値観を変えてしまった。嫉妬したら何を思っても何をしてもいいと。だからこそ、一真と両想いになった私の前にもいつか本気で一真を奪おうとしてくる人が来ると思ってずっと警戒していた。

 でも、それが実際に起こるのは稀なのかもしれない、他のギター部の彼女や彼氏がいる人も、相手の人間関係を気にしている人は居ないように思う。