“久しぶり。今日、一緒に帰れる?”
“お久しぶりです!帰れます!”
“じゃあ放課後、下駄箱のとこで待ち合わせでいいかな?”
そう聞くと、名倉くんから、了解です!の猫の可愛いスタンプが送られてきた。
夏休みでなかなか名倉くんと話せないまま日にちが経ち、気づけば8月中旬。
夏期講習が始まり、名倉くんも学校に来てるだろうと、思い切ってLINEで約束をしてしまった。
きっと告白の返事だと思ってるはず。
はっきりした返事ができないのが心苦しいけど、でも、今の私の気持ちをそのまま話すしかない。
「お待たせしました!すみません、遅くなってしまって」
「ううん、大丈夫だよ」
「じゃあ、帰りますか」
校門を出て、並んでゆっくり歩いていく。
「今日はありがとね」
「いえ、久しぶりに会えて嬉しいです」
「、うん」
素直な言葉に、上手く返せない。
「実は…ちょっと話があって」
「はい」
「この前の告白のことなんだけど、」
ごくんと唾を飲んで息を吸う。
「返事、もう少しだけ待ってもらえないかな」
「え、」
私の言葉に、名倉くんはぽかんとして、立ち止まってしまった。
「告白してくれて、ほんとに嬉しかったよ。でも、その…まだ自分の気持ちがよく分からなくて、答えを出せてなくて…」
「…そうなんですね」
「ごめん、自分勝手なこと言ってるのは分かってる。ちゃんと答え出さなきゃなのも分かってるんだけど、まだ…」
名倉くんの目をしっかり見て、真剣に話すけど、上手く伝えられなくて焦る。
でも、
「分かりました」
「え…」
「少しは可能性あるってことですよね?」
「、うん、ある、あるよ」
それは嘘じゃない。
思い切り頷くと、やっと微笑んだ名倉くん。
「じゃあ待ちます。もう少しだけ」
「…ありがとう」
よかった。納得してくれた。
ホッと胸を撫で下ろす。
だけど、ちゃんと伝わったと思ったのは、私の思い違いだった。



