それから早2週間。

7月に入っても、私の気分は落ちたまま。

愛ちゃんも心配してくれるけど、立ち直り方がわからない。

突然あんな形で失恋するなんて思ってもなかった。

先輩との今までは何だったんだろう。

私だけ勝手に盛り上がってたのかな。




放課後の廊下を、とぼとぼと歩く。

日直だった私は、日誌を渡しに職員室へ行った。

「失礼します」

小さく挨拶をしてから、職員室の中へ入る。



あれ…名倉くん。

2年生の島の手前に1年生の島があって、横を通る時、何気なく目をやると、そこには名倉くんが立っていた。

椅子に座った先生が名倉くんに何か喋ってて、名倉くんはなんかちょっとしょんぼりしてる様子。

どうしたのかな。

気になりつつも、担任の先生に日誌を渡して用が済んだ私は職員室を出た。


名倉くんに会ったの久しぶりのような…いつぶりだったっけ…

頭の中でぼんやり考えながら歩いてたら、


「川原先輩!」

後ろから声がして、振り向いたら名倉くんが走って近寄ってきた。


「名倉くん、どうしたの」

「さっき職員室で見かけて、急いで追いかけてきました」

はぁはぁ息を切らしながら喋る名倉くん。

名倉くんも気づいてたんだ。

「私に何か用事?」

「あ、用事…はないんですけど…。久しぶりに川原先輩を見かけたのでつい、」

足が動いてました、とはにかむ。

素直な答えに私の方が照れ臭くなって、目を逸らしてしまう。

「…先生と何か話してたの?」

「あー、はいちょっと」

「あ、言えないことなら全然」

「いやそうじゃないんですけど、ちょっと恥ずかしくて」

「恥ずかしい?」

名倉くんは一瞬躊躇った後、

「実は、英語が全然できなくて呼び出されてたんです…」と言った。

「英語?」

「中間テストがひどくて。もうすぐ期末だから、ちゃんと勉強してるかって」

「あ〜」

「また悪かったら放課後補習だぞって言われちゃいました」

「わ、補習はやだね」

「夏休み前に補習はさすがに嫌すぎます…」

はぁとため息をつく名倉くん。

「確かに、それは避けたいよね」

「はい…。川原先輩、英語得意ですか?」

「私?んーまぁ、どちらかと言ったら得意な方だけど、」

「ほんとですか!教えてください!」

食い気味に言われて、えっ、と驚いた。

「いやぁ教えられるかな…」

「お願いします!一生のお願いです!」

一生のお願いって。
ここで使わなくても。

真剣な表情に思わず笑ってしまう。

「分かった、いいよ」

「ありがとうございます!このあと時間あったりしますか?」

「あー、今日は図書委員の日なんだよね、」

「そうですか…」

「あ、でも」

私はふと思いついて、いいよと言った。