6月下旬、暑い日が増えてきたある日の放課後。
私はいつものように図書委員の受付をしていた。
「川原、久しぶり」
「あ…お久しぶりです」
また不意に現れた先輩に、ドキッとする。
「今日も当番なんだ」
「はい。先輩は勉強ですか?」
「そ、自習スペースで勉強しに来た」
「お疲れさまです」
「ありがと」
村井先輩が口角をクイッと上げて笑う。
先輩とはしばらくLINEをしてなくて、直接話すのも、前にここで会った時以来だ。
あの時話したリフレッシュの約束も、結局、一度も頼まれてない。
「じゃあ、行くね」
多くは話さず、そのまま自習スペースの方へ歩いていこうとした村井先輩。
「…、あの、村井先輩!」
「ん?どした?」
「あの…今日、一緒に帰りませんか?」
「…」
一瞬の間の後、先輩は「いいよ」と言った。
「あ…ありがとうございます!」
「図書委員の仕事、何時まで?」
「17時半までです」
「了解、じゃあそれまで勉強してるね」
「はい」
改めて、先輩は自習スペースへ歩いていった。
ふぅ…と息を吐く。
また私から誘ってしまった。
先輩から誘ってくれる気配が全くなかったから。
でも、断られなかったな…
良かった…んだよね?
17時半近くになって、先に下駄箱行ってるね、と声をかけていった村井先輩。
片付けを急いで終わらせて、少し早足で下駄箱へ向かう。
先輩、どこかな。
靴を履き替え、辺りを見回すと。
「え…」
校舎を出てすぐのところに村井先輩の姿が見えて、そのすぐそばには、1人の女の子がいた。
体が勝手に動いて、柱の影に隠れる。
楽しそうに話してる先輩の横顔に、胸がギュッと掴まれたような気持ちになる。
誰だろう…あの人。
先輩と同じクラスの人かな。
2人が話してるところに出ていく勇気がなくて、柱の影からそっと様子を伺うことしかできない。
どうしよう…と悩んでいるうちに、その人は1人でどこかへ居なくなった。
すぐ行くか少し迷いつつも、結局先輩のもとへ歩いていく。
「あ、川原」
私に気づいた先輩が、よっ、と手を挙げて微笑んだ。
「、お待たせしました」
「ううん、じゃあ帰ろっか」
「はい」
何も見てないふりをして、先輩の隣に並ぶ。
「一緒に帰るの久しぶりだね」
「そうですね、」
先輩が誘ってくれないから、なんて言えない。
先輩は、私に会いたいとか思ってくれたりしないのかな…
「どっか行きたいとこある?」
「え、行きたいとこですか?」
「うん」
「えーと行きたいとこは…」
特に考えてなかった!
浮かばなかったら、まっすぐ帰るだけになっちゃう?
心の中で焦っていると、先輩が「もしないならさ、」と言った。
「駅前のジューススタンド、ちょっと寄らない?」
「え、」
「リフレッシュ、付き合ってくれるんでしょ?」
村井先輩が、ん?と首を傾げて私を見る。
私が言ったこと覚えててくれたんだ。
それに先輩から提案してくれた。
すごく嬉しい。
「はい!行きましょう!」
私は思いきり頷いた。



