ドキッ。
ド直球の言葉に思わず固まる。
「…、それはどうも、」
やっと口から出てきたのは、めちゃくちゃぎこちない言葉。
言った張本人が、恥ずかしそうにするものだから、私はなおさらどうしたらいいか分からない。
「…さ、行きましょ」
「あ、うん」
照れくさい雰囲気のまま、私たちは歩き出した。
ゴミ捨て場に辿り着いて、廃棄する本を積み重ねる。
「ありがとう」
「いいえ。まだ他にもあるんですか?」
「あーうん、まぁ」
「じゃあ戻りますか」
「あ、いいよ名倉くんは」
「なんでですか、2人でやった方が早いですよ」
「でも…用事は?どこか行く途中だったんじゃない?」
「いやべつに…あ、」
思い出したみたいな顔をする名倉くん。
「ほら」
「でもほんとにしょーもないというか、友達にゲームで負けて、ジュース買いに行くとこだっただけなんで」
「えっじゃあ友達待ってるってこと?ダメだよそれは」
「いや大丈夫ですよ、ちょっとくらい」
「ダーメ。私なら1人で大丈夫だから、次は台車使うし」
「えー…」
拗ねたように口を尖らせる姿がちょっと可愛い。
「手伝ってくれてありがとね」
「…わかりました。そしたら、途中まで一緒に行きます」
「うん」
さっき来た道を戻り、自販機があるところまで来たら、
「川原先輩、何がいいですか?」
名倉くんが自販機を指差して言う。
「え、私はいいよ。むしろ手伝ってもらったし、私が」
と思ったけど、今、財布も何も持ってなかった…
「僕はいいんで、選んでください」
ほんとにいいの?と聞くと、こくんと頷く。
「じゃあ…レモンティーをお願いします」
「了解です」
お金を入れてレモンティーを買う姿を眺める。
ガコンと音を立てて出てきたペットボトルを手に取り、私に差し出してきた。
「ありがとう」
受け取ろうとすると、なぜか名倉くんはペットボトルを離そうとしない。
「名倉くん?」
ペットボトルから目を上げると、まっすぐな瞳とぶつかった。
「川原先輩。また今度、一緒に帰りたいです」
「っ…」
息が止まりそうになる。
お互い掴んでるペットボトルを通して、私のドキドキが伝わってしまうんじゃないかと思う。
「だめですか?」
「…ううん。いいよ」
「よしっ、やった!」
「今度は私がお礼するね」
「はい!楽しみにしてます!」
ほんとに嬉しそうに喜ぶ名倉くん。
「…じゃあ、私行くね。これありがとう」
恥ずかしさを隠すように早口で言って、くるっと背を向けて歩き出す。
「あ、川原先輩!」
後ろから聞こえた声に、今度は何だろうと恐る恐る振り返ると。
「絶対、台車使ってくださいよ!」
「……ふっ。はい、ありがとう」
大きく手を振る名倉くんに軽く振り返して、また歩き出す。
頬が熱い気がして、私は冷たいペットボトルを頬に当てた。



