つぐなえない罪


「柚香〜。昨日はほんとにごめんね?」
「いや、いいよ。・・・あと、今日は、ちょっと寄るとこあるから。帰っててね」
「あっ、うん」
 駅で会った史那と、一緒にしゃべりながら、電車が来るのを待つ。
「ねぇ、土曜日にさ、カフェ行かない?この前、家族で行ったんだけど。すっごく美味しくて。京耶(けいや)が教えてくれて・・・」
「それって、なんていうカフェ?どこにあるの?」
 京耶っていうのは、史那の兄で今はホワイトハッカーなの。
「『ラパン-ノワール』っていうカフェ。場所は・・・えっと、あの『ヒナタモール』の、2階だったと思う」
  『ーー電車が参ります。黄色い線の内側でーー』
「あっ、電車来るね」
「そうだね」
 電車が来て、私たちの目の前で止まる。
 扉が開く。
 電車の中から何人かの人が出て来る。
「何してんの、柚香。乗るよ?」
 ぼんやりと突っ立っていると、史那にそう言われた。
 いけない。しっかりしないと。
 そう思って、前に一歩踏み出した。