つぐなえない罪


「近くにこんなところあったんだ」
 スマホのライトをつける。周りが、ぼんやりと明るくなる。
 私が見つけたのは、洞窟だった。・・・なんか色々置いてあるけど。
「誰のものなんだろう」
 私が本を取ろうとするとーー
「誰だよ、お前‼︎」
「ひゃっ」
 振り向くと、私と同じくらいの歳の男の子がいた。
 この子の持ち物なのかな。でも、なんで洞窟に?
「なぁお前、聞いてんの?」
「き、聞いてます!」
 感じの悪い男だ。
「・・・っ!その制服・・・・・・」
 白ノ蘭の制服、知ってるんだ。白ノ蘭を知っていても、制服ってあんま知られてないんだよね。
 近所の子なのかな。
「お前、白ノ蘭の誰だ?」
「許斐、柚香です。あなたは?」
 名乗らせておいて、自分は名乗らないなんて、許さないよ。
「俺は、南雲 哉人(なぐも かなと)。今日いるってことは、新入生か」
「そう、ですけど・・・」
「そうか・・・」
 っていうか、全然、本取って帰らないんだけど。
 なんで?
「あの、帰らないんですか?」
「は?帰るってどこに?」
「い、家に・・・・・・」
 急に不機嫌になる、南雲くん。
「俺の家、ここなんだけど」
「え?な、何言ってるんですか。ここが家って・・・。洞窟ですよ?」
 何を言っているんだ、この人は。
「だからなんだよ。関係ないだろ。・・・ほら、早く帰れよ」
 少し不満があるけど、仕方ない。帰るか。
「分かったから。でも、また来るかもしれないよ?」
「来んな」

  このときは、まだ知らなかったの。
   彼が、"殺人犯“だったってことをーー。