つぐなえない罪


尾見西 史那の視点

 はあー。
 今日、なんで一緒に帰れなかったんだろう?
 私は、モヤモヤしながら、パフェを食べる。
 ・・・今日も、あの営業の人いたな。
 あの人、すっごいウザい。
 なんなの⁉︎
「って言ってもな・・・」
 私、今日の6時間目は、移動教室だったんだけど。
 その時、ふいに西館を見たら、柚香がいたのだ。
『え?』
 びっくりして、少しの間、立ち止まってたんだけど。
 その後、他の女子生徒が降りてきたの。
 彼女も、白い制服だったから、柚香のクラスメートなんだろう。
 もしかしたら、先輩かな?
 でも、柚香って、先輩と接点あったっけ?
 ・・・分からない。
 いつまで経ってもあれが誰だったのか分からないから、ずーっとモヤモヤしてるのだ。
 柚香に聞くほどのことではないしなぁ。
 ムムムムム・・・。
「ふーちゃん。おひさ〜」
「・・・眞白?」
 顔を上げると、女の子がいた。
 見覚えはないけれど、おひさ、って言うってことは、知り合い、ってことだよね。
「うん、そーだよ。・・・1人なんだねー」
「うん、1人だよ」
 眞白・・・網野 眞白(あみの ましろ)は、私と柚香の中学の時の同級生。
 まあまあ仲の良かった子。
「・・・そっかー。ふーちゃん、白ノ蘭だったねー。ゆうもか・・・」
 ぼんやりと呟く、眞白。
 眞白には、たくさんお世話になった。
 全然クラスに馴染めなかった私と、仲良くしてくれたのだ。
「眞白さ、どう?高校は」
「んー、どーだろ。普通かな。あんまり変わり映えしなかったし。・・・ふーちゃんとゆうはいなくなっちゃったけど」
 麗埜女子は、あまり外部生がいないらしい。
 ま、ちょっとしたお嬢様学校なのだ。
「・・・あっ、そうだ!なんか、校長室から聞こえちゃったんだけどね。麗埜、グループ校の鴉埜と合併するかもなんだって」
「え、そうなの‼︎」
 鴉埜男子学院(からすのだんしがくいん)は、麗埜女子を経営する、王宮学園(おうきゅうがくえん)が経営する学校。
 小中高一貫校で、お金持ち学校。
 何回か合同授業があったんだけど、結構いい感じっていうか、大人っぽかった。
 さすがは鴉埜!みたいな。
 ・・・ただまあ、合併されるってなると、ちょっとね・・・。
 女子校だったのに、って感じ。
 女子校だからこの学校を選んだ、って子もいると思うし。
 っていうかその人のほうが多いだろうし。
「合併されるなら、転校?しようかなーって思ってる。・・・まあでも、『女子部』『男子部』『共学部』をつくる、らしいから。どーしよっかなぁって」
 確かに、女子部ができるなら、麗埜でも良いのかもしれない。
 ・・・っていうか、名前はどうなるんだろう?
「名前、どうなるか、とか聞こえた?」
「あー。・・・なんか、麗鴉学院(れいあがくいん)になるかも、って」
 麗鴉、か・・・。「埜」を省くってことか。
 でも、なんか良いね、「麗鴉」って。
 カッコいい。
「・・・それで、どうなの?ふーちゃんは。白ノ蘭」
「ん?あー、なんか、みんな賢そう。勉強ついていけるかな〜?って感じ」
 ほんとにみんな、頭良さそうなのだ。
 育ちも良さそうだし。
 先生も厳しそうだし。
 ・・・でも、麗埜よりはマシかな。
 先生と良い関係つくれなかったし。
 友達もビミョーだったし。
 でも、白ノ蘭は、まあまあ仲良くできそうだもん。
 ・・・うん。なんとかなる、だろう。
「そっかー。私も白ノ蘭受ければ良かったなー」
「えっ?」
 なんでだろう。
 眞白は、他の子たちと仲良くやってたのに。
 成績も良かったし。
「・・・最近さ、今まで仲良かった子と、ちょっと・・・、色々あってね?同じクラスになった子、あんまり話したことのない子ばっかりで・・・。ちょっと孤立してるの」
「そう、なんだ・・・・・・」
 眞白が友人関係で悩むなんて、思ってもみなかった。
「大体が中学からの持ち上がりだから、グループもできてて・・・。違うクラスには、しゃべれる子、いるんだけど、さ。・・・なんか、孤独、っていうのかな」
 孤独・・・・・・。
 眞白が、孤独を感じるなんて・・・。
「ね、ふーちゃん。ふーちゃんは、連絡先変わってない?」
「え?変わってないよ?」
 ぱぁっと明るくなる眞白。
「じゃあ、これから時間合う時さ、一緒に遊ばない?ふーちゃんと遊ぶの楽しいし、もしふーちゃんと遊んでるところ見られたらさ、白ノ蘭の子と仲良いって自慢できるじゃん」
 自慢できる、って・・・。
 やっぱり友達欲しいんだ・・・。
「柚香とも遊びたいなー」
「柚香、連絡先変わってないよ。私からも言っとくね」
「ほんと‼︎よろしくね」