つぐなえない罪

 『私は、あなたの秘密を知っています。』
 朝、学校に来ると、机の中に、こう書かれた紙が置いてあった。
 『話があるので、放課後、西館の4階に来てください。』
 話、か・・・。
 脅されるのかな?
 でも、誰なんだろう。
 私の秘密を、知っている人物。
 ・・・・・・秘密、って、あのことだよね。
「許斐さん?どうしたの、突っ立って」
「え?あ、ううん。なんでもないよ。ボーッとしてただけ」
「そう?ならいいけど・・・」
 気にしないようにしよう。
 放課後まで、思い出さないようにしよう。
  そんな私を、誰かが冷たい目で見ていたーー。

「あれ、清佳。今日部活来ないの?」
「あー、うん。ちょっと用事あって」
「そっかー。じゃあまたね」
 そんな会話を右から左に聞き流して、私は帰る準備をする。
「許斐さん。今日やっときますよ。日誌」
「ああ、よろしく」
 恩咲くんに日誌を渡す。
「あれ、今日恩咲くんがやるんだ、日誌」
 後ろから、小早川さんが話しかけてくる。
 全く準備はできていないみたいだけど。
「うん」
 私は、ボストンバックを持つ。
「帰るんだね、今日。いつもは尾見西さん待ってなかった?」
 火曜日だけ、5時間の時がある、特進創造総合科。
 でも、史那とかの一般総合科や特進科、一般科は、火曜日は必ず6時間。
 だから、5時間の時は、いつも待ってたんだけど・・・。
「うん、ちょっとね・・・」
 史那には、お昼に、今日は一緒に帰れない、と言っているから、大丈夫だろう。
「そうなんだ。じゃ、また明日ね」
「うん。また、明日」
 教室から出て、西館に向かって歩き出す。
 一体、私の秘密を知っているのは、誰なんだろう。
 もう、着いてるのかな?
 というか、どこで分かったんだろう。
 なんで分かったんだろう。
 どうして、バレたんだろう。
 ・・・分からない。
 今まで、完璧だった。
 誰も気づいていない。
 誰にもバレてない。
 だから、これからも大丈夫。
 って、そう思ってたんだけどな・・・。

「よいしょ」
 西館の階段を上る。
 なんで4階なの?
「は〜。もうすぐだ」
 なんとか4階に辿り着く。
 すると、そこにいたのは・・・。
「来てくれたんだね、許斐さん。・・・いや、弓川、咲生さん」
「木南さん・・・」
 そう。そこにいたのは、私の前の席の、木南 清佳(きなみ きよか)さんだった。