つぐなえない罪

 俺、南雲 哉人は、自分で言うのもなんだけど、ちょっとしたお金持ちの家の生まれだった。
 お前も知ってるだろ?
 『南雲ホールディングス』って。
 俺の父親は、その社長で、祖父が会長だった。
 ま、別に自慢って訳じゃないんだけど。
 俺は、次男で、兄と妹がいるんだ。親戚とも一緒に暮らしてた。
 父さんも母さんも、親戚の人達も、みんな兄貴に期待してて……。俺の兄、郁人(いくと)っていうんだけど。
 それで、次男の俺は、別にいらないっぽくて。
 幼い頃から、1人が多かったんだ。……みんな兄貴についていくから。
 ……俺が小学校に入学した時くらいからかな。
 父さんとか、叔父さん、叔母さんが俺と妹に暴言吐き始めたんだ。
 妹は、幼稚園の年中さんで、いつも泣いてて。
 兄貴も母さんも、見て見ぬふり。
 ただ、祖父母にはバレないようにやってて……。
 俺が高学年になってから、手も出された。
 殴られたり、蹴られたり。
 俺、その時、思ったんだ。
 俺が妹を守らないと、って。
 だから、なるべく妹と一緒にいた。
 そのせいで、俺は、すごいアザだらけだった。
 ……一回、児童相談所?ってとこに連絡して、電話の向こうで、お姉さんが、真摯に向き合ってくれたんだ。
 でも、父さんたちが裏で手、回してて……。
 会社のイメージに傷がつく、って。
 中学に入学してから、なんか、急に許せなくなったんだ。父さんも、母さんも、兄貴も、親戚の人たちも。
 それで、俺は、叔父さんとか叔母さんの朝食に、毒盛った。ちょっと経ってから、死んだよ、部屋で。
 ……その後、父さんと母さんと兄貴を、刺し殺した。
 キッチンにあった包丁で。

 それで、妹が倒れてるのに気づいて、通報。
 俺は自分の部屋に『俺がやりました。 南雲哉人』って書いた紙を置いて、家を出た。
 妹は、多分今、祖父母の家で暮らしてると思う。
 この事件があってから、家庭内暴力が明らかになったから。
 祖父母は、謝罪会見をしたらしいからね。
 孫を溺愛していた、じいちゃんだったから。

 俺は、学校もやめて、今までずっと逃げ続けているんだよ。