「じゃ、いつも通りでお願いします」
私がいるのは、お花屋さんだ。
お父さんのお墓と、お母さんのお墓に供える花を買いに来ていた。
この後、洞窟に行くつもりだ。
「柚香ちゃん、だっけ。いつもガーベラを15本買ってるけど、花言葉は、知ってるんだよね?」
「はい。知ってます」
「そう・・・・・・」
『ごめんなさい』という花言葉を知って、この花しかないと思ったのだ。
2人への、"お花”は。
「はい、どうぞ。今日もおまけして、15本で800円にしとくね」
「あ、ありがとうございます」
「お母さん、ごめんね。私は、白ノ蘭にちゃんと合格したよ」
お母さんの命日は、ちょっと前だったんだけど、受験勉強で、来れなかったのだ。
だから、お父さんの墓参りの時に、一緒に行こうと思ったのだ。
「お父さんも、ごめんね。白ノ蘭で、頑張ります。・・・・・・あと、史那も元気だよ。最近は、りっちゃん・・・理月と会ったの。元気そうだったよ」
哉人くん、っていう男の子と出会ったの。って言いたかったけど、声には出さなかった。
「また来るね」
私はそう言って、霊園を出る。
そして、あの洞窟に向かって、歩き出した。
「哉人、くん」
驚く顔をする、哉人くん。
「お前、今日来たのか?」
途中から雨が降って来たので、走って来たのだ。
折りたたみ傘はあったんだけど・・・。
「この前の続き、聞きたいの!・・・・・・覚悟は、出来てるから」
「・・・じゃあ、こっち来いよ。・・・・・・あんまり誰かに話したい内容じゃないんだけど」
哉人くんの隣に座る。
哉人くんは、暗い顔をして、話し出した。



