つぐなえない罪


「じゃあね〜」
「うん、バイバイ」
 帰りはお兄さんが迎えに来てくれる、史那と、家の方向が違う理月と別れて、1人家に向かう。
 ここは、学校の近くだった。
 ・・・哉人くん、怒ってるかな?
「柚香・・・っ」
 え・・・?
 振り向くとそこには、
「かっ、哉人くん」
 後ずさる、私の足。
「どっ、どうし、たの・・・?」
 思い出すのは、カレーの匂いだった。
 もうすぐ、あの日だ。
 あの日、私は・・・っ。
「どうしたもなにも・・・。お前、最近全然来ないよな。俺が来るなって言っても来てたのに。なんで?」
「理由なんて、どうでもいいでしょ」
 とりあえず、これから1週間は行かないでおこう、と思っていたの。
 理由は、言えないけど・・・。
「あっそ。・・・じゃあ、もう2度と来るなよ」
「それは無理‼︎・・・あんなの聞いちゃった以上、行かない、なんて選択肢ないから!」
 そうだよ。
 聞いちゃったんだから。
 続きを聞きたい。知りたい。
 もしかしたら、私とーーっ。
「でも、お前あれ聞いたせいで体調崩したじゃん。聞きたくないんじゃねーの?」
「それはっ・・・、そう、だけど・・・」
 でも、私は聞きたいの!
「私、また今度、絶対行く、から・・・。覚悟して、行くから・・・っ」
「無理して来んなよ」
 哉人くんは、そう言ったあと、私の横を通り過ぎる。
「ちょっと重めの話だから」
 こう、私の耳元で言って。