悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜






「…いいや、何でもない」



にっこりと誰もがため息を漏らす美しい笑みをステラに向けるとステラはそんな私に「あはは」と乾いた笑い声を漏らした。



*****



ステラと別れた後、僕は宮殿の馬車に乗って宮殿への帰路についていた。



「ピエール」

「はい」



僕の目の前に座る僕と同年代のピエールに声をかける。
するとピエールはその暗い青のふわふわの髪から除く黒い瞳で僕をまっすぐ見つめた。
ピエールはもう何年も共にいるいわば僕の右腕のような存在だ。



「今日の18歳前後の女性の情報は?」

「こちらでございます」



僕に言われてピエールが自身の横に置いていた鞄からいくつか資料を出す。
そしてそれを僕に渡した。



「今日はフランドル公爵邸周辺の地域の調査を行いました。ご確認をお願いいたします」



ピエールに渡された資料を一枚一枚確認していく。
資料に書かれているのは年齢、名前、職業、簡単な性格、それから似顔絵だ。
どの資料を見ても僕の探している女性だと思しき人はいない。

今日出会ったステラの方がずっと僕が探している女性だと思えてしまう。
絶対に違うはずなのに。