悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜






「みんな、みーんなね。私じゃなくてお前を評価するの。お前は私なのにおかしいわよね?あの顔だけしか取り柄のないユリウスにはいつもバカにされて、ロイ様からは無下に扱われる。お前が私だった時はそうではなかったのにおかしいわよね?何でみんなお前を評価するのかしら。お前は何も持たない何者でもないただの道具だというのに」



リタがおかしそうにくすくすと笑いながら、ゆっくりとこちらに迫る。
私を見つめるアメジストの瞳は鋭く、嫉妬や憎悪、怒りなど様々な感情が入り混じっていた。
明確な悪意しかない瞳だ。



「さあ、できるだけ苦しんで死にましょうね」



逃げることのできない私は、ぐっとリタに胸ぐらを掴まれ、車椅子から無理やり引きずり落とされる。



「…っ」



リタに引きずり落とされたことによって、私は床へとそのまま落下し、足と頭以外の全てに鈍い痛みを感じた。

最悪だ。

今まで陥ったどの状況よりも最悪で私は絶望的な気持ちになる。

万全な状態の私なら何とかこの場から逃げられるだろうが、今は違う。
両足を骨折している為、思うように動かせない。
ここから形勢逆転することはほぼ不可能に等しい。



「まずはどこから痛めつけようかしらぁ」



鼻歌交じりに私を見下ろしているリタと目が合う。
私は注意深くリタの次の行動を見ながらも、胸にあるネックレスを握り締めた。