今も私が消えたことに心を痛めているか。
それとも私なんて忘れていつもと変わらぬ生活を送っているのか。
…どうか後者であって欲しい。
ユリウスにはもうできるだけ辛い思いはしてもらいたくない。幸せであって欲しい。
そんなことを思っている私の耳に複数の足音が聞こえてくる。
遠くから聞こえるそれは徐々にこちらへと近づいてきた。
「…」
この屋敷でセス以外の人に出会ったことはない。
この屋敷にはいつも私とセスだけで誰もいなかった。
それなのに複数の足音が今、こちらに迫っている。
…セスがこの広すぎる屋敷を1人で管理することに限界を感じて人を雇ったとか?
その人たちが今たまたま私のいるところに向かっているとか?
そうであったのならどんなによかったか。
廊下のずっと向こうから迫ってきた足音の持ち主に私は言葉を失った。



