「…確かに帝都には帰る家はないよ。でも帝都外には…」
困った顔で私はユリウスに笑う。
嘘はついていない。いずれリタの代役を終えた時には帝都から遠く離れた土地で暮らす予定だったのだから。
そこを目指すだけだ。一文なしだが、リタの代役の時に手にしたスキルさえあれば何とか生きていけるだろう。
「わかった。ではお前の傷が完治するまではせめてフランドルで面倒を見させてくれ」
「…うん」
私のどうしてもここから離れたい気持ちが伝わったのか、ユリウスは無愛想だが、どこか心配そうにそう言た。
その後私とユリウスは一言も喋ることなく、ご飯を口に運び続けた。
ユリウスのことをずっと冷たい人間だと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。
だが、その優しさが今の私には大変不必要のないものだった。



