「ありがとう、セス」
あの頃の私なら受け取りもせず、流し続けたセスの言葉を私は初めて笑顔で受け取った。
するとセスは感極まった表情を浮かべて泣きながらもしっかりと力強く頷いた。
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セスが私の本当の味方になってくれた。
あとはこの両足を治し、セスと共に帝国外へと行くだけだ。
いろいろあったが、今度こそ私は本当に帝国外へと逃げ、自由を手に入れられる。
今度はセスも一緒だ。きっともう大丈夫なはずだ。
セスと共に昼食を食べ、セスがまた仕事へと行った午後。
もう屋敷内を自由に動くことを許されていた私は1人車椅子に乗って、この屋敷内の廊下を何となく散策していた。
大きな窓から昼下がりの暖かい日差しが差し込む。
少し前までは、この日差しでさえも浴びることが叶わなかったわけだが、今ではもうそうではない。
「…」
…ユリウス元気かな。
ふと、窓の外の美しい景色を見て私はそう思った。
フランドル邸から逃げ出してもうどれほどの月日が経ったのだろうか。
キースに保護されていた一ヶ月間はちゃんと外の情報を得ていたので、ユリウスがずっと私を探していることも知っていたが、セスに監禁されてからは外の情報を一切得れていないので、ユリウスの近情がまるでわからない。



