「み、見逃してくれないかな」
「見逃す?何故です?」
何とか隙を作ろうと笑顔を作り、セスを見れば、セスはそんな私を不思議そうにきょとんと見つめた。
もしかすると、ほんの少しだけでも私に情が残っているのかもしれない、という考えは早々に捨てた方がいいだろう。
「…」
私に敵意を向けるセス以外の気配はないかとそれとなく周りの気配を確認するが、セス以外の気配は感じられない。
つまりおそらく今ここに私を捕えようとする者はセスしかいないのだ。
何故、セスは私を1人で捕えようとしていのだろうか。
絶対に逃したくない獲物のはずなのに。
そこまで考えて私は自身の体にある違和感を覚えた。
「…っ」
突然、立っていられなくなり、私はその場で両膝をつく。
「よかった。ちゃあんと効いてますね」
そんな私の元に嬉しそうに微笑みながらセスが近寄ってきた。



