「今日は何をしていたんだ?」
大きな立派な机を挟んだ向かい側からユリウスが冷たい表情のまま私に問う。
ここはフランドル公爵邸の食堂であり、私は今この食堂でユリウスと2人で殺伐とした空気の中、晩御飯を一緒に食べていた。
ちなみに殺伐とした空気の原因はもちろん今目の前にいるユリウス・フランドルのせいだ。
私は先ほどから努めてこの男に笑顔を向けるようにしている。少しでも空気がマシにならないかと思って。
「…寝ていました。療養中ですし」
「それから?」
「…あー。おやつも食べました。今日は苺のゼリーでとても美味しかったです。やっぱり春には苺が食べたくなりますね」
「そうだな。他には?」
「ほ、本も少し読みました。メアリーが選んでくれたんですよ。少しだけなのでまだ全部は読んでいないんですが」
「そうか。どんな本だったのかまた詳しく教えてくれ」
「…はい」
この男は本当にあのユリウス・フランドルなのだろうか。
そう問いかけたくなるほど冷たい印象は相変わらずだが、ユリウスは私によく話を振ってくる。
しかし話を振ってくるといっても自分で話を振ってくるくせに少し相槌をしてほとんど話さないのでほぼ話しているのは私だった。
この場にいつもならいるフランドル公爵と夫人が今日は予定があるようでいない。
なのでこのような空気での晩御飯になってしまっていた。
毎晩この食堂で私は何故かこのフランドル公爵家の一員として食事を共にしている。
素性の知れない保護した子どもに普通そんなことまではしない。私に用意した部屋に食事を運べば済む話なのに。
ここ1週間の私へのフランドル公爵家の対応はまるで家族を労うようで私には疑問しかなかった。
フランドル公爵家はそれだけ慈悲深い家とか?



