推しは恋のキューピッド

「こちらこそありがとう。ちゃんと鍵閉めるんだぞ。
じゃあおやすみ」


私が扉を閉めたのを確認してから、早川課長は帰ったようだ。外から足音が遠ざかる音が聞こえる。


ふー、今日は色々あったな。
一息入れて真っ暗な部屋を振り返る。

そうすると、さっきのあいつのニヤッと笑う顔が
フラッシュバックしてきた。

こわい…
もうあいつはいないのに…


でも今、1人になるのは嫌だった。


私は咄嗟に身体が動いた。
部屋を出て、急いで階段を降りる。
アパートの外に出ると、駅に向かって歩く
早川課長の背中が見えた。


私はその背中に向かって、走って飛びついた。


「っえ!?中森??
せっかく送ったのなんで出てきた!危ないだろ!」


「帰らないでください!!」


早川課長が怒るのも無視して、私は叫んだ。


「え?」


早川課長はびっくりしている。


「だから!帰らないでください!」