どうしよう…

そう思ったとき、早川課長の顔が浮かんだ。


私は震える手でスマホを取り出し、
早川課長にLINEを送った。


『痴漢されて、いま後をつけられてるかもしれません。』


何も考えられず、ただ状況だけ送った。
するとすぐに既読がつき、電話がかかってきた。


「中森さん大丈夫?いまどこ?」

「…今練馬駅降りたところで…ホームにいて…
後ろに…」


震える声でそう伝える。


「中森さん。今周りに人はいる?」


「いるけど少ないかも」


「今から俺もそっち向かうから。それまでは駅員さんに事情を話して一緒にいてもらって。すぐ迎えに行くから。大丈夫。行ける?」


優しい早川課長の声にだんだん落ち着いてきた。


「…行けます」


私はそう答えると震える足に鞭を打って、
歩き始めた。