「早川課長、少しお時間宜しいですか?」


私は川崎さんから聞いた事の経緯を早川課長に伝えた。
静かに話を聞いていた早川課長は、全て聞き終えると


「川崎さん」


と声をかける。
川崎さんは怒られると思い、怯えた様子でか細く返事をする。


「隠さず伝えてくれてありがとう。これならすぐ対処できる。ただ中森さんにもここの部分の修正を手伝ってもらってもいいか?」


「はい!もちろんです!」


私は指示とともに書類を受け取る。
その一連の様子をみて、川崎さんは戸惑っている。


「早川課長、こんなミス…どうして怒らないんですか?」


川崎さんは震えながら早川課長に問う。
すると早川課長は川崎さんの目をまっすぐ見つめながら答えた。


「ミスがない人間なんていない。だから大切なのは、ミスした事をどう取り返すかが重要だと思う。川崎さんは、隠す事なく気づいたらすぐこちらに伝えてくれた。それだけで対応は十分だ。それに川崎さんがどれだけ熱心に仕事と向き合ってくれてるかは、普段の様子から分かってる。何も責めるところがない。あとはもう同じミスはしないように気をつけろ。以上。」


早川課長はそれだけ言うと、すぐ各所に電話をかけ始める。