「とりあえず、今日はもう遅いしお開きにしよう。
梓も突然色々言われて混乱してるだろうし…
俺はやっぱり今日はこいつ連れて帰るよ。」



「え?」



私がきょとんとしているうちに、
早川課長はそう言って自分の荷物を抱えると、
がっちゃんの腕を掴んで立ち上がらせる。



「俺はまだ返事を聞いてなっ………!」




がっちゃんは一瞬抵抗するも、

 


「梓にも考える時間が必要だ。突然こんなこと言われたんだ。まぁ本当はすぐにでも断ってほしいって本音はあるが、俺は梓には笑顔でいて欲しいんだ。………だから俺はしっかり考えて後悔ないように選んで欲しい。」




早川課長が私にそう伝えるのを聞いて、
がっちゃんは口を閉じ、そのまま帰り支度をする。




私がどう返事をするか迷ってるのを感じ取って、
早川課長は気を利かせてくれたようだ。




今すぐがっちゃんに返事をしなくていいということにホッとするとともに、早川課長とがっちゃん2人に曖昧な対応をしてしまうことに罪悪感で胸が苦しい。



「じゃあ、梓。今日はこれで帰るね。」



「あ、想さん。………ありがとう。」



帰ろうとする早川課長の背中にそう伝えた。



すると、少し驚いたように早川課長は振り返る。



「今日•••••初めて名前呼んでくれたね。嬉しい。
ありがとう。それじゃあ、おやすみ」




早川課長は少し切なそうに微笑むと、
部屋を後にした。