「うわ!私…!すいません!!
なんだろって思っちゃって…すいません!」
恥ずかしさでおかしくなりそうだ。
あわあわとしつつ謝りながら、急いで手を離す。
その様子をみて、早川課長がクスッとまた笑う。
あ、また笑った。綺麗…
私が思わず見惚れていると
早川課長はサッと私の手から書類を奪う。
「ちょっと緊張してたけど、今のでほぐれた。」
早川課長はそう呟くとまたいつもの無表情に戻る。
でもなんとなくいつもより雰囲気が柔らかいように感じる。
「早川課長も笑うんですね。」
私がそう言うと、前を歩いていた早川課長が急に立ち止まる。
「…中森さんは俺のことをなんだと思ってるの。俺だって笑うことはある。」
早川課長が少し不貞腐れたように振り返って答える。
なんだか今週はいろんな表情をみている気がして、近づけたようで純粋に嬉しかった。
私が笑うと、早川課長はふぅと一息つき、会議室へと一緒に向かう。
大した事ない一言だったけど、初めての業務以外の会話だった。
