ありふれた日常こそ、尊い。


それから、凪のお母さんの葬儀はしめやかに行われ、お母さんは骨壺に収まり戻って来た。

お互いに大切な家族を失い、一人遺された者同士のわたしたちは同棲することになり、そののちに凪からのプロポーズを受け結婚した。

家族を失ったけど、今度はわたしたちが新たな家族となったのだ。

そしてわたしは、あれだけ好きだったザッ◯スのタペストリーや、グッズたちを段ボールの中に詰め、クローゼットの奥へと封印した。

「いいのか?ザッ◯ス飾らなくて。」

凪にそう言われたが、わたしは「うん、いいの。」と答え、凪に抱きついた。

「凪が居てくれるだけでいい。」

わたしの言葉に凪は、「俺も、美月が居てくれれば、それだけで充分だ。」と抱き締め返してくれた。

そんなわたしたちの間に新しい命がやって来てくれたのは、結婚してから半年後の事だった。

順調な妊婦生活を経て、38週で無事に女の子を出産し、わたしたちは三人家族へとなった。

産後、まず退院して帰宅すると、小さな仏壇の前に行き、娘を抱っこしてお母さんの写真の前に行った。

「お母さん、孫が生まれましたよ。」

写真の中のお母さんは優しく微笑んでいる。

わたしが「お母さんに、会ってもらいたかった、、、抱っこしてほしかったなぁ。」と呟くと、凪は「きっと空から見てくれてるよ。」とわたしの肩を抱いた。

それから育休を取得してくれた凪との育児が始まった。

何もかもが初めてで、アタフタしてしまうこともあるけれど、凪が居てくれるだけで心強くて、一人じゃないと思えた。

育児は大変だけど、娘は愛おしくて、何気ないことですら幸せに感じる。

この世界は、目まぐるしくて、理不尽なこともあって、上手く行かないこともあるけど、その中にでもあるありふれた日常が、日常こそが尊いのだと、生きていると感じさせられる。

「あー!オムツからウ◯チ漏れてる!」
「あら〜!いっぱい出たんだね!お着替えしようね!」

こんな瞬間でさえ、わたしは幸せだ。




―END―