ありふれた日常こそ、尊い。


ナースコールを押すと、すぐに担当医の藤枝先生と看護士さんが来てくれた。

藤枝先生は、凪のお母さんの様子を見ると「日は跨げません。あと数時間だと思ってください。」と告げ、「そばに居てあげてください。耳はまだ聞こえていると思いますから。」と言った。

あと、数時間、、、

凪は藤枝先生の言葉に涙を滲ませたが、グッと堪え、お母さんの手を握り締めた。

「母さん。ありがとうは、俺の台詞だよ。女手一つで、俺を育ててくれてありがとう。苦労ばっかりしてきたよな。俺も、正直寂しいと思ったことはあるけど、、、でも、母さんの息子に生まれてきて良かった。俺を生んでくれてありがとう。母さん、、、まだ逝くには、早すぎるだろ、、、」

凪はそう言うと、握り締めたお母さんの手を額につけた。

わたしは凪の背中に手を添えながら、凪が握り締めるお母さんの手に、自分の手も重ねた。

「お母さん、わたしに"本当の娘ができたみたい"って言ってくれた時、凄く嬉しかったです。わたしも、"本当のお母さんができたみたい"で、、、嬉しくて、、、まだまだ、一緒にお話がしたいです。わたしのことを、温かく迎えてくださって、ありがとうございます。お母さん、、、お母さん、、、」

それから徐々に凪のお母さんの呼吸は浅くなっていき、心臓の鼓動も弱まっていった。

そして、午後7時23分。

凪のお母さんは、凪とわたしが見守る中、静かに息を引き取った。

やっぱり大切な人を看取るって、ツラい、、、

ツラいって言葉じゃ表せない程の悲しみの中、凪とわたしはベッドの上で永遠の眠りについたお母さんにすがりつき、泣いて泣いて、泣き続けた。