ありふれた日常こそ、尊い。


それから土日はもちろん、平日も出来る限り凪と一緒にお母さんに会いに行った。

お母さんは日に日に食欲もなくなり、痩せていき、酸素マスクが必須になっていて、喋るのも困難になってきていた。

そして、余命宣告から二ヵ月後には、脳への転移のせいで喋れなくなり、身体も自力では動かせず、目を見開いた状態が続いた。

それでも耳は聞こえているはず。

だから、お母さんからの反応がなくても、凪とわたしは今まで通りに話し掛け続けた。


ある日の土曜日。
この日は、凪と一緒にお母さんにずっと付き添おうと、病院に泊まることにした。

相変わらず、お母さんは目を見開いた状態のまま、話し掛けても反応はなかったが、わたしたちはいつも通りに話し掛けた。

「お母さん、今日は天気がいいですよ!空が綺麗!」

そう言って空を見上げたあと、わたしは凪のお母さんのそばに丸椅子を置いて座り、お母さんの手のひらをマッサージした。

すると、ずっと何の反応もなかったお母さんが「美月、さん、、、凪、、、」とわたしたちの名前を呼んだのだ。

「母さん?!」
「お母さん?!はい、わたしたちはここに居ますよ!」

久しぶりのお母さんの反応にわたしたちは驚きながらも、お母さんの呼び掛けに答えた。

「あり、が、とぅ、、、」

お母さんは微かな声でそう言うと、深呼吸をするような今までとは違う呼吸のし方に変わり、その異変に凪は慌ててナースコールを押した。