ありふれた日常こそ、尊い。


「なぁ、美月。」

抱き締め合いながら、涙声で凪がわたしを呼んだ。

「なぁに?」
「今日、、、ずっとそばに居てくれないか?美月と、離れたくない、、、」

凪はそう言って、わたしを強く抱き締めた。

「うん、いいよ。凪のそばに居る。」
「ありがとう、、、ごめんな。こんな弱い俺で。」
「何言ってるの?お母さんの前で泣かずに我慢したんだから、弱くなんかない。それに、、、わたしも謝らなきゃいけないことがあるんだぁ。」
「えっ、何?」
「わたし、、、救急隊員の人に咄嗟に凪の"婚約者です"って言っちゃって、、、勝手に、そんなこと言っちゃって、ごめんね。」

わたしがそう言うと、凪は「なんだぁ、そんなことか。」とホッとしたように呟き、それから「俺は、元々そのつもりでいたんだけど。」と言った。

「えっ?」

わたしは驚き、少し身体を離し、凪を見上げた。

「ずっとそばにいてほしいって、言っただろ?だから、俺はそのつもりでいたよ。美月を"婚約者"だって認識でいた。」
「、、、凪。」
「だから、謝る必要なんて無いし、、、むしろ、美月がそう言ってくれたのが嬉しい。」

凪はそう言って、わたしの頬を濡らした涙を親指で拭ってくれた。

「一緒に泣いてくれて、ありがとう。」

そう言い、微笑む凪の頬も涙に濡れていて、凪の涙はわたしが拭ってあげた。

それから再びわたしたちは抱き締め合い、そっと目を閉じた。