ありふれた日常こそ、尊い。


それから凪が病室に到着したのは、その30分後のことだった。

「母さん、ビックリしたよ。転倒したって聞いて、頭でも打ってたらどうしようって。」
「ごめんねぇ、母さん馬鹿よねぇ。」

とりあえず、話せる状態にあるお母さんの姿を見て、凪は安心したようだった。

「凪、先生から説明あるみたいだから行こっか。」
「あぁ。じゃあ、母さん。ちょっと行ってくるな。」

そう言って、凪とわたしは一度病室を出て、ナースステーションに向かった。

そして、凪が「天海ですけど。」と伝えると、お母さんの検査を担当した先生が来て、個室へと案内された。

「えーっと、天海優子さんのご家族の方ですよね?」
「はい、息子です。」
「検査を担当させていただきました、整形外科医の峰と申します。宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします。」

わたしも凪と共に「宜しくお願いします。」と会釈する。

すると、早速レントゲンを見ながらの峰先生からの説明が始まった。

「えーとですね、一通りレントゲンを撮ったんですが、肋骨と足首にヒビが見られました。まぁ、これは安静にしていれば自然とくっついてきますので心配いらないかと思います。ただ、、、ちょっと気になることがありまして。」

峰先生はそう言うと、肋骨あたりを撮影したレントゲンのある一部を指した。

「ここ、白くなってるのわかります?」

先生が指した箇所は複数あり、それは骨の部分だった。

「元々、肺癌を患っているようですが、その癌が骨に転移し始めています。骨に転移してしまうと、治療は難しいです。通院されている病院に転院して、担当医と今後のことを相談されてください。」

峰先生の言葉に、凪とわたしは言葉を失った。

骨に転移、、、

わたしはもちろんショックだったが、それ以上に凪はショックを受けているだろう。
凪の膝の上に置かれた拳は、微かに震えていた。