凪はわたしを見ると驚いた表情で入口の方まで来て「美月、どうしたんだよ。」と言った。
わたしたちは企画課の入口から少し場所をズラすと、わたしは「今日締切のサンプルがあって、木村課長に見せに来たんだけど、、、何かあったの?」と凪に訊いた。
「あぁ、、、明日母さんの病院受診日だから、付き添う為に半休申請してたんだよ。そしたら、取引先が俺が半休申請した日に打ち合わせをズラして欲しいって言って来たらしくて、半休申請取り消されたんだ。」
「えっ?!でも、担当って凪だけじゃないでしょ?」
「うん、他に3人いるよ。でも"リーダーのお前が行かなくてどうするんだ"って言われた。」
「何それ!何の為にいる3人なのよ!」
わたしが苛つきながらそう言うと、凪は「参ったなぁ。」と呟いた。
「あのさ、もし良ければだけど、わたしがお母さんの病院付き添おうか?」
わたしがそう言うと、凪は「え?!そんな美月に迷惑かけらんないよ。」と言った。
「迷惑じゃないよ!わたしは今日締切の仕事終わったし、明日は半休取っても問題ないし!お母さんを一人で行かせるのは心配じゃない?」
「まぁ、そうだけど、、、本当にいいのか?」
「うん!大丈夫だよ!」
わたしがそう言い、親指を立てて見せると、凪は微笑み「あー、美月を抱き締めたい!」と言い出した。
「えぇ?!こんなとこでダメだよ!」
「分かってるよ。だから今日、美月の家に行った時に抱き締めさせてもらうから!」
わたし、、、だ、抱き締められるの?!
え、今までに誰かに抱き締められたことなんてないよ。
わたし、どうしたらいいんだろう。
手はどこに置いたらいいの?!
わたしの頭は"抱き締められる"という事でいっぱいになり、その後に木村課長にサンプルを提出した時のことすら、覚えていない程だった。



