ありふれた日常こそ、尊い。


そして凪は二段冷蔵庫を開けると、「美月、烏龍茶でいい?」と言い、わたしは「うん、ありがとう。」と答えた。

「母さん、最近の体調は?」

烏龍茶をコップに注ぎながら、凪が訊いた。

「最近は割と落ち着いてるよ。」
「病院、来週だったよな?」
「うん。来週はただの診察と薬を貰うだけだから、すぐ終わると思う。」

凪と、凪のお母さんのその会話を聞きながら、わたしはある事に気付いた。

凪のお母さんの首からは、ワンプッシュで電話がかけられる小さな携帯電話がぶら下がっていたのだ。

ボタンは4つ。
きっと、何かあった時にすぐに電話がかけられるように首から下げているんだろうなぁ。

そう思っていると、凪が「はい、どうぞ。」と烏龍茶を運んで来てくれた。

「ありがとう。」

そんなちょっとしたわたしたちのやり取りを、微笑ましそうに見る凪のお母さん。

凪のお母さん、少しは安心してくれたかなぁ。

「美月さん、凪は迷惑かけてないかしら?何かあったら、すぐ言ってね?」
「ありがとうございます。大切にしていただいてますよ。ただ、、、しいて言うなら、一言多いって事くらいですかね。」

わたしがそう言うと、凪は「おい!」と恥ずかしそうにし、凪のお母さんはフフフフッと笑いながら「分かるわ。この子、一言多いのよね。」と言ったのだった。