(この人、本当は可哀想な人なんだよなぁ)
焔は心の中で思った。
本来、メルギアは人間だった。弱く、いじめられ、馬鹿にされていた。家族でさえも、期待されてなかった。
メルギアは、努力を重ねて強くなったが、誰にも認めてもらえてなかった。憎しみと悲しみに駆られて魔王になった、という過去がある。
「あなたは、本当は悪者なんかじゃない。だから殺さない。」
ぽいっと、焔は小刀を捨てた。
「…!」
メルギアは、大きく目を見開いていた。
「じゃあ、私はこれで。魔王城だけで、我慢していてください。」
焔は、くるりと振り返り帰ろうとした。
「待って!」
メルギアは焔の手を握り引っ張って、引き留めた。
「…何ですか?」
「俺を弟子にしてくれっ!」
「…はぁ?!」

