白雪姫の王子様

ある日。

学校で、いつものように三人で話していた時だった。

「まだまだ寒いな〜」

「そりゃ二月だからな」

「一年で一番寒い時期だろ」

そんな、何気ない会話。

「莉子、防寒しすぎじゃね?」

翔が笑う。

「寒いの無理なんだもん!」

「手袋、マフラー、コート、タイツ!
あと暖かいインナー二枚重ね!」

「すげぇな……」

俺は呆れながら返す。

窓の外を見る。

白い雪が、静かに舞っていた。

「蓮は防寒とか全然しないよな」

「まあ、家近いし」

「それでもマフラーくらいしろよ〜」

翔が笑いながら続ける。

「意外と似合ってたんだよな、赤いマフラー」

その瞬間。

空気が止まった。

赤いマフラー。

雪と、お揃いだったマフラー。

雪がいなくなってから、
ずっと引き出しの奥にしまったまま。

見ると、全部思い出してしまうから。

イルミネーション。

笑顔。

手の温度。

“また明日”


重い沈黙が落ちる。

誰も喋らない。

違う。

誰も、なにも言えなかったんだ。

「……今日は帰るか」

やっと、俺は言葉を絞り出した。

「お、おう」

「寒いし、ウチ先帰るね」

莉子はうつむいたまま言った。

少し、声が震えていた気がした。


その後、俺と翔は黙って歩いた。

お互い、何も言えない。

「じゃあ」

「おう」

いつもの別れ。

家へ入る。

「ただいま」

「おかえり」

母さんの声が返ってくる。

その“いつも通り”が、今は少しだけ、
落ち着いた。


部屋へ戻る。

ベッドへ倒れ込む。

静かな部屋。

でも、頭の中では、

まだ雪が笑っていた。