白雪姫の王子様

16:00。

車を降りる。

クリスマス前の店内は、
カップルや家族で溢れていた。

そんな人混みを抜けて、俺はまっすぐ、
あの店へ向かった。

雪が見つめていた、あの赤い口紅を買うために。

ショッピングモール内は、
思っていた以上に、人が多かった。

プレゼントを買うだけなのに、
こんなに時間がかかるなんて。

クリスマスって、こんなにすごいのか。

どこを見ても、

恋人。

家族。

笑い声。

みんな幸せそうだった。

もし、雪と二人で、こういう場所を歩けたら。

手を繋いで。

並んで。

笑いながら歩けたら。

それだけで、きっと楽しいんだろうな。

気づけば、自然と口元が緩んでいた。

その時。

ふと時計を見る。

17:00。

「やばっ……」

急いで病院へ向かわないと。

俺は人混みを抜け、バス停へ走った。

病院までは、バスで十五分。

その時だった。

スマホが鳴る。

「……莉子?」

どうせ、“遅い”って怒られるんだろ。

そう思いながら電話へ出る。

「もしーー」

『やっと出た!』

莉子の声が、震えていた。

心臓が嫌な音を立てる。

「どうしたーー」

『雪が……!雪がぁ……!』

その瞬間。

全部、わかった。

頭の中が真っ白になる。

俺は、何をしてたんだ。

なんで、今、雪のそばにいない。

「急いで行く」

それだけ言って、電話を切る。

走る。

ちょうど来たバスへ飛び乗る。

息が苦しい。

「なんで今日なんだよ……」

視界が滲む。

でも、泣くわけにはいかなかった。

まだ、雪は頑張ってる。

なのに、俺が折れてどうする。

今の俺には、願うことしかできない。

どうか。

どうか――

間に合ってくれ。