白雪姫の王子様

雪の母親は、何も言わなかった。

ただ、静かに立っている。

……当然だ。

今までずっと、“奇跡”を信じてきたんだから。

受け入れるには、
きっと、長い時間が必要なんだと思う。

もしかしたら、
一生受け入れられないのかもしれない。

俺は、どうすればいいのか分からなかった。

ただ、その場に立っていることしかできない。

すると――

「あなたは……」

雪の母親が、小さく呟く。

まっすぐ、俺を見つめながら。

「雪のことを、どう思っているの?」

その言葉に、息が止まる。

どう、思っているのか。

そんなの、もうずっと前から決まっていた。

でも、俺は言葉にすることから逃げていた。

好きになることも。

失うことも。

全部、怖かったから。

だけど――

今、言わなきゃいけない。

ゆっくりと、息を吸う。

「……愛しています」

自分でも驚くくらい、まっすぐ言葉が出た。

「今も」

「……」

「これから先も」

声が、少し震える。

でも、嘘はひとつもなかった。

その言葉を聞いた瞬間、
雪の母親の表情が、少しだけ崩れた。

涙が、頬を伝う。

それなのに、どこか安心したように笑った。

「あなたが、一番……」

震える声。

「雪と向き合ってくれていたのね」

その言葉が、胸の奥に静かに落ちてくる。