白雪姫の王子様

16:00。

莉子と一緒に、病室の飾り付けをしていると――

「俺がきたぞーー!」

勢いよく扉が開いた。

振り返る。

そこには、大きな袋を抱えた翔くんが立っていた。

「翔くん!」

私たちが声をかけても、

翔くんは何も返さない。

……違う。

何か、小さく呟いている。

次の瞬間。

ドサッ。

翔くんが、持っていた袋を床へ落とした。

「ちょっと!何してんの!」

莉子が慌てて拾いに行く。

でも、その隙に翔くんがすごい勢いで、
こっちへ走ってきた。

そして、私の目の前で急停止する。

「翔……くん?」

その時だった。


ピコン。


聞いたことのない音。

「え?」

「雪ちゃん、可愛すぎるって!!」

翔くんが、私の周りをぐるぐる回り始める。

何が起こってるの!?

混乱していると、

「やめなさいっ!」

莉子が翔くんの頭を叩いた。

「いてっ!何すんだよ!」

「それは雪のセリフでしょ!」

「可愛すぎる雪ちゃんが悪い!」

「だからって急に動画撮っていいわけないでしょ!」

動画……?

「そう!こいつ動画撮ってたの!」

莉子は呆れた顔で、翔くんのスマホを指差した。

急に顔が熱くなる。

でも――

動画。

今日の私が、残るんだ。

その瞬間、胸がぎゅっと締め付けられる。

……残してもいいのかな。

でも、残したい。

今日のこと。

みんなと笑ってる私を。

「莉子、翔くん」

二人が、同時にこちらを見る。

「私、動画撮ってほしい」

一瞬、二人が目を丸くする。

でも次の瞬間、同時にスマホを取り出して、
親指を立てた。

「任せろ!」

「世界一可愛く撮ったげる!」

そうして、病室の中で、
小さな撮影会が始まった。