白雪姫の王子様

15:30。

「これで完成!」

莉子が満足そうに笑った。

そして、病室に置かれている大きな鏡の前へ、
私を立たせる。

鏡を見る。

「……きれい」

思わず、声が漏れた。

そこに映っていたのは、小さい頃、
何度も絵本で見た“白雪姫”みたいな女の子だった。

深い赤のワンピース。

白い肌。

ほんのり色づいた頬。

綺麗に整えられた髪。

こんな女の子、今まで見たことがない。

「これが、本当の雪だよ」

後ろから、莉子がそっと肩に手を置く。

優しく、静かな声だった。

「これが……私……?」

信じられなかった。

病気の私じゃなくて。

苦しそうな私じゃなくて。

ベッドの上にいる私じゃなくて。

“普通の女の子の私”が、そこにいた。

「ありがとう……莉子……」

気づけば、涙が溢れていた。

「あー!だから泣かないの!」

莉子が慌てて、私の涙を拭いてくれる。

「今日はもう泣いちゃダメ!
せっかく可愛くしたんだから!」

そう言って、莉子は私の手をぎゅっと握った。

その手は、温かかった。

「雪は本当に泣き虫だね」

呆れたように笑う莉子。

でも、その目は少し赤かった。

私は、その手を強く握り返す。

「……うん!」

今日は、泣かない。

今日は、みんなと笑う日だから。