白雪姫の王子様

 15:00。

「できた!」

莉子が満足そうに笑った。

「ほんと!?見せて!」

鏡を見ようとすると、莉子が慌てて隠す。

「だめ!」

「なんでぇ?」

「それはですね〜」

莉子は意味深に笑いながら、

バッグを漁り始めた。

「莉子?」

「ジャーン!」

取り出されたのは、赤いワンピースだった。

「え……?」

深いワインレッドのワンピース。

光を受けるたび、
星みたいにキラキラと輝いている。

白いレースのブラウスと重なる姿は、
まるでお姫様のドレスみたいだった。

「これ、どうしたの?」

「ウチの!」

莉子は笑いながら、私へ差し出す。

「雪にあげようと思って」

「え、でも……悪いよ」

こんな綺麗な服。

絶対、莉子の方が似合う。

それに――

もう、着る機会なんて。

「いいの!」

私の言葉を遮るように、
莉子がワンピースを押し付けてくる。

「でも、莉子の方が――」

「ウチ、これ入らなかったの!」

莉子は少し恥ずかしそうに、うつむきながら言った。

「あ……そうなんだ」

なんて返せばいいんだろう。

そう思ったのに、口から出たのは――

「ふふっ」

笑い声だった。

「今、笑ったでしょ!?」

莉子が勢いよく、私の肩を掴む。

「違うってば!」

「絶対笑った!」

前後に揺らされる。

「り、莉子っ、目回る〜」

「あ、ごめん!!」

莉子は慌てて手を離した。

「大丈夫!?「苦しくない!?」

急に真剣な顔になって、私の顔を覗き込む。

その姿が面白くて。

気づけば私は、お腹を抱えて笑っていた。

「あははっ……!」

「雪?」

莉子が不思議そうに見ている。

笑いすぎちゃダメなのに。

でも、止まらなかった。

こんな風に、本気で笑ったの、いつぶりだろう。

「莉子、大丈夫だよ」

深呼吸をする。

すると、莉子は安心したように息を吐いた。

「……もう、びっくりさせないでよ」

その顔が、少し泣きそうに見えた。

「ねぇ」

私はワンピースを抱きしめながら、莉子を見る。

「着るの、手伝ってくれる?」

一瞬で莉子の顔がぱっと明るくなる。

「もちろん!」

その笑顔が、とても嬉しかった。