白雪姫の王子様

目を覚ますと、外はすっかり明るくなっていた。

今日は、待ちに待ったクリスマスパーティーの日。

ゆっくり体を起こす。

時計を見る。

13:30。

「結構寝ちゃったな……」

最近、眠っている時間が増えていた。

ぼんやり時計を見つめる。

13:30……?

……あれ。

何か忘れてる。

「……あっ!」

慌てて起き上がる。

今日は、

みんな終業式で午前中に学校が終わるって言ってた。

『ウチ、13:30くらいには来るね〜』

莉子の言葉を思い出す。

もう来る時間だ。

でも今の私は――

酸素マスク。

ボサボサの髪。

完全に寝起き。

「やばっ……!」

幸い、蓮くんはケーキ作りで遅れるらしい。

でも、本当は。

……早く会いたい。

そんなことを考えながら、

急いでナースコールへ手を伸ばした。

その時だった。

「雪!来たよ――」


ガラッ。


病室の扉が開く。

「莉子っ!」

でも、莉子は途中で言葉を止めた。

その視線が、私の酸素マスクへ向く。

「……なに、それ」

小さな声。

「これは……」

何て言えばいいんだろう。

大丈夫って言う?

苦しくないって言う?

でも、言葉が出なかった。

すると、莉子がゆっくり近づいてくる。

そして、優しく私の手を握った。

「蓮たちには言わない」

その言葉に、思わず顔を上げる。

「雪、無理してるんじゃないかって」

「ずっと思ってた」

「莉子……」

「これくらい、想定内」

そう言って、莉子は笑った。

その優しさが、胸に刺さる。

「ありがとう……」

気づけば、涙が溢れていた。

すると突然、

ペチッ。

莉子が両手で、私の頬を挟む。

「えっ?」

「泣いちゃダメ!」

「目腫れちゃうから!」

「でもぉ……」

「可愛い顔が台無しになるでしょ!」

そう言いながら、莉子はハンカチで、
優しく涙を拭いてくれた。

「ほら、向こう向いて!」

「え、なんで?」

急に後ろを向かされる。

すると、莉子が髪をとかし始めた。

「雪って寝相悪いんだね〜」

「そ、それは……」

恥ずかしい……!

でも、莉子は笑う。

「ウチ、ボサボサな雪も好きだけどね」

「なんでぇ?」

「可愛いから!」

「なにそれ〜」

自然と笑ってしまう。

「髪終わったらメイクもするからね〜」

「え、今日も?」

「しない方がおかしいでしょ!」

きっと莉子は、私の顔色や、
痩せていく体に気づいてる。

だから、今日も綺麗にしてくれるんだ。

「ありがとう」

「どういたしまして〜」

何気ない会話。

でも、今の私には、
それがたまらなく嬉しかった。

だって今だけは、“病気の私”じゃなくて。

普通の女の子で、いられている気がしたから。