白雪姫の王子様

病室へ戻る。

制服を脱ぎ、院内着へ着替える。

鏡を見ながら、慣れないメイクを落としていった。

少しずつ、

“今日の私”が消えていくみたいで、少しだけ寂しい。

寝る準備を終えて、ベッドへ腰掛ける。

先生も、「体調に問題がないのは奇跡だ」
と言っていた。

奇跡か……。

ぼんやり、今日一日のことを思い出す。

私にとっては、全部が憧れの世界だった。

みんなは慣れたように、
色んな場所へ連れて行ってくれた。

でも、その“普通”を、私は今まで知らなかった。

少しだけ、寂しくなる。

それでも、今日は本当に楽しかった。

たくさん、思い出ができた。

「あっ」

バックを開ける。

中から、猫のぬいぐるみを取り出した。

蓮くんが、私のために取ってくれたもの。

ぎゅっと抱きしめる。

ゲームセンターは、まるで別世界だった。

ゲームも、全部楽しかった。

プリクラも、最初は緊張したけど、
みんなと一緒に笑えて嬉しかった。

莉子が、私のために服を選んでくれた。

鏡の中の自分は、まるで別人みたいだった。

フードコートも、すごかった。

あんなにたくさん、
食べ物のお店が並んでるなんて知らなかった。

見ているだけで楽しくて、
本当は全部食べてみたかった。

でも、私の体は、それを許してくれない。

それでも、
みんなが美味しそうに食べてる姿を見てるだけで、
幸せな気持ちになれた。

イルミネーションも、本当に綺麗だった。

「蓮くん……」

思わず呟く。

「私の写真、どれくらい撮ったのかな……」

その瞬間、一気に恥ずかしくなった。

だって、あの時は、
蓮くんが“綺麗”って言ってくれたことが嬉しくて、
何も考えられなかったから。

「変な顔してたらどうしよ……!」

一気に顔が熱くなる。

両手で顔を覆って、
ベッドの上で小さく暴れていると――

「雪ちゃん、何してるの?」

突然、声がした。

「あっ……先生」

そこにいたのは先生だった。

また変なところを見られてしまった。

恥ずかしくなって、うつむく。

先生は優しく笑った。

「今日は楽しかったみたいだね」

そう言って、床へ落ちていた写真を拾ってくれる。

「はい!」

写真を受け取りながら、大きく頷いた。

「素敵な思い出になりました」

すると先生は、写真を見ながら笑う。

「相変わらず、蓮は写真撮られるの下手くそだな」

その笑顔が、少しだけ蓮くんに似て見えた。

私は思わず、先生の顔をじっと見つめてしまう。

すると、急に目が合った。

びっくりして、慌てて目を逸らす。

でも先生は、
特に気にしていないみたいだった。

「今日は疲れてるんだから、ちゃんと寝るんだよ」

そう言って、静かに病室を出ていく。

私はベッドへ横になる。

電気を消す。

そして、蓮くんが取ってくれたぬいぐるみを、
ぎゅっと抱きしめた。

胸の奥が、温かかった。

私はそのまま、
幸せな気持ちに包まれながら、
ゆっくり眠りについた。