白雪姫の王子様

次の目的は、

〈ウィンドーショッピング〉

事前に、雪に欲しいものを聞いてみた。

でも、

「特にないよ」

と笑われてしまった。

その代わり、

「色んなお店を見てみたい」

そう言っていた。

だから今日は、雪が興味を持った店へ、
片っ端から入ることにした。

最初は、若者向けのアパレルショップ。

「雪!これ絶対似合う!」

莉子は服を掴むなり、
そのまま雪を試着室へ連行した。

そして、次から次へと服を持ってくる。

俺と翔は、外で待機。

「女ってすげぇな……」

「ほんとにな」

男二人で呆れていると、
しばらくして莉子が顔を出した。

「二人とも来て!」

半ば強引に試着室前へ連れていかれる。

そして――

「ど、どうかな……?」

恥ずかしそうに出てきたのは、
ワンピース姿の雪だった。

コート。

バッグ。

靴。

全部揃っている。

まるで、雑誌のモデルみたいだった。

……可愛い。

でも、言葉が出てこない。

「すげー似合ってるじゃん!」

「でしょ〜!?可愛すぎ!」

「ほんと姫みたい!」

「まあ、私のセンスなんだけどね〜」

盛り上がる莉子と翔。

そんな二人を見ながら、少し羨ましくなった。

俺は、こういう時、うまく言葉にできないから。

その後も、雪は何度も着替えさせられた。

まるで着せ替え人形だ。

どれも似合っていた。

……でも、ミニスカートだけは、
なんとなく嫌だった。

雪は大変そうにしながらも、
鏡に映る自分を見るたび、驚いたように笑っていた。

「一着くらい買ってあげるよ!」

莉子がそう言ったけど、

「着ていく場所ないし……」

雪は困ったように笑った。

結局、そのまま店を出ることになった。

その後も、雑貨屋。

アクセサリーショップ。

色んな店を回った。

雪は、全部が新鮮みたいだった。

目を輝かせながら、ひとつひとつ丁寧に見ている。

そして、コスメショップへ入った。

俺には、完全に未知の世界だ。

翔は、

「もう無理」

と言ってソファへ沈んでいた。

女子のテンションについていけない、
と言うことだった。

まぁ、俺は雪が楽しいなら、
なんでも良かった。

雪は莉子に説明してもらいながら、
色んなコスメを見ている。

そんな中、

「待ってて!私、買わなきゃいけないのあった!」

と、莉子が別の商品を見に行った。

二人きりになる。

「欲しいもの、あったか?」

そう聞く。

雪は小さく頷いた。

「全部素敵で……」

少し笑う。

「病気じゃなかったら、全部欲しいなって思っちゃった」

その言葉に、胸が締め付けられる。

雪は、ただ普通の女の子みたいに、
買い物を楽しみたいだけなんだ。

しばらく歩いていると、雪が立ち止まった。

視線の先を見る。

そこには、一本の口紅。

鮮やかな赤色だった。

莉子が使っているものより、もっと深くて、
綺麗な赤。

「……きれい」

雪が小さく呟く。

確かに、綺麗な赤だった。

その口紅は、有名ブランドのものらしい。

買ってやりたい。

そう思った。

でも、雪は絶対、遠慮する。

だから俺は、何も言わなかった。

ただ、雪が見つめるその赤色だけが、
妙に頭へ残った。